世界情勢と株価変動

日々の世界情勢と株価変動について考察

今後の北方領土返還交渉の相手と関連銘柄の行方


 国会でゼレンスキー大統領のオンライン演説があった、記念すべき3月23日の今日。


 23日の東京株式市場で日経平均株価は7日続伸し、前日比816円05銭(3.0%)高の2万8040円16銭となった。

 1月18日(2万8257円)以来およそ2カ月ぶりに2万8000円台を回復。

 7日続伸は21年9月以来の記録となる。

 前日の米株式市場で主要株価指数が上昇した流れを受け、東京株式市場でも幅広い銘柄に買いが入ったと言う。


 それにしても、演説するだけで日経平均株価を800円も押し上げるのだから、申し訳程度にしかTOPIXを買いに入らない日銀より、余程ゼレンスキー大統領の方が頼りになると言うもの。


 その午後6時から行われた国会のオンライン演説に於いて、ゼレンスキー大統領は、「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本です。引き続き継続をお願いします」と語り、会場を埋め尽くす国会議員からスタンディング・オベイションを浴びた。


 私もリアルタイムで視ていたが、非常に力強い説得力のあるものだった。


 感銘を受けたのは国会議員も同様で、演説の直後、自民党の高市政調会長は記者団に対し、「制裁の対象をさらに広げる道もあるのでは」と語った。


 ところが、中にはそうでもない国会議員も居るようで、ロシアと太いパイプを持つとされる日本維新の会の鈴木宗男参院議員は、「国際社会に向けて『撃ち方やめだ、話し合いを』という強いメッセージを日本政府の方から出してほしい」と要望したと言う。

 

 鈴木宗男氏は先日も講演に於いて「日本には国益の問題として北方領土や平和条約交渉の問題がある。米英と立ち位置が違う」と述べ、欧米に足並みをそろえて制裁に踏み切った日本政府の対応に疑問を呈し、講演後、記者団に「日本からパイプを閉ざした感じだ」と語っていたらしい。


 私としては、このタイミングでそうした発言をするのは如何なものか、或いは少々ズレているのではないか、と、思いもするのだが、何と言っても彼は今年で御歳74才であり、間も無く後期高齢者医療制度の恩恵を受ける御仁である。

 

 してみると彼に取ってのロシアは、平成の、否、昭和のロシアなのかも知れないし、はたまた、返還交渉している筈のロシアがロシアでさえなく、ソヴィエトと返還交渉しているつもりなのかも知れない。

 それに何より、彼が交渉相手をプーチンだけに限定している事に問題がある。


 と、言うのも、今回のウクライナ侵攻での失敗で、プーチンの立場が非常に危ういものになっていて、政権存続に黄信号が灯っていると言う事がある。


 では、鈴木宗男氏の交渉相手であるプーチン政権が、ロシア国内でどう言う状況になっているのかと言うと、彼の政権を支える三つの支持基盤である「シロビキ」と呼ばれる軍、諜報、警察など、また「新興財閥のオリガルヒ」と「メディア」が、同時に全て揺らいでいるらしいのだ。


 そのうち、「オリガルヒ」と「メディア」に於いては、直接プーチンをどうこう出来る立場にはないが、「シロビキ」と呼ばれる連中が手を組めば、プーチンを暗殺し、彼に取って変わる事も可能だと言う。


 また、ロシアの裁判所は22日、禁錮2年6月の刑で服役中ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏に対し詐欺や法廷侮辱の罪で禁錮9年と、大幅に刑期を延長する旨を言い渡したのだそうだ。  

 この事でナワリヌイ氏の釈放を求めている欧米が、プーチン政権への非難を強めるのは必至である。


 従って、我が国を始めとした西側諸国としては、何とかしてプーチンが居なくなった後のロシア指導者の立場に、ナワリヌイ氏が就いて欲しいと考えるのも自明。


 そうして西側の思惑通り、プーチンの後をナワリヌイ氏が引き継ぐのか、或いは前述の「シロビキ」の内の誰かが引き継ぐのか。

 或いはプーチンがこのまま逃げ切るのか。


 状況は混沌としていて、先が見えない。


 ただ、何れにしても、北方領土の返還交渉を行う相手が、プーチンで無くなる可能性は大いにあるのだ。

 

 然るに鈴木宗男氏は、このウクライナ侵攻で変わってしまった世界の潮目を読み切れず、頑なに返還交渉相手をプーチンに限り、旧態依然とした返還交渉の考えを堅持する。


 故に、長年北方領土返還を訴えて活動されて来た事には敬意を表したいが、今回の発言を聞くに及び、鈴木宗男氏に於かれては、最早政界を退かれるべき時なのではないかと思うのである。


 それこそ、今、北方領土返還を願う者なら尚の事、ナワリヌイ氏との返還交渉を考えるべき時であり、どう転んでも北方領土を返還してくれないプーチンとの返還交渉など、こちらから願い下げるべき時なのである。


 無論、プーチンが「シロビキ」達により暗殺でもされ、その内の誰かが政権に就く事があれば、その人物はプーチンと同じ穴の狢であろうし、体制が変わる事は無いだろう。


 だからこそ、我々は今、ナワリヌイ氏を中心とした次世代を担う、民主主義政権との返還交渉を考えるべき時なのである。

 そう言う意味では、そろそろ北方領土返還運動に於いても、リーダーの世代交代を図るべき時なのかも知れない

 

 一方、ウクライナに侵攻したロシア軍地上部隊は、激しい抵抗に遭い、進軍が停滞しているのとは対照的に、これまで防御に専念していたウクライナ軍が南部を中心に攻勢に転じ、ロシアに占領された領土の奪還を図りつつあると言う。 


 米国防総省高官によると22日、記者団に対し、露軍によって制圧状態とみられていた東部イジュームでは、ウクライナ軍が奪還に向けて激しい戦闘を展開。

 また、AP通信などによると、ウクライナ国防省は22日、ウクライナ軍が首都キエフから約50キロ西にある要衝マカリウをロシア軍から奪還したと発表した。


 ここに来て流れが変わって来たのである。

 ウクライナ軍が巻き返しているのだ。


 とは言うものの、そうだからこそロシア軍が、核や化学兵器を使う可能性を孕む。


 そして仮にそうなれば、ニューヨークも、東京も、ヨーロッパも、上海も無い。

 悉くどの市場でも相場の逆回転が始まる。


 また、世界中から総スカンを食らって経済制裁を受けるロシアが資源大国だと言う事もあり、禁輸による原油高の影響を受けて電気代が高騰しており、それが原因で各家庭の家計を苦しめている現況がある。

 加えて先日の関東地方の地震の影響で、需給関係が逼迫した事も懸念されるところ。


 何と言っても、3.11の大地震による福島原発の事故以来、東電管内は火力発電所頼みの電力供給状況下にあると言う事がある。

 昨日、東電管内で「電力需給ひっ迫警報」が出された事も、そうした不安定な電力供給の影響だと言えよう。

 火力発電所が止まってしまえば、万事休すなのである。

 

 そうした電力供給の不安定化に、電気代高騰が重なる二重苦のなかでの、昨日の株価高騰は何とも不気味である。


 ただ、そうした電力供給の問題が出てくれば、原発を稼働させようとの話も出て来るものだし、先日、原発関連の銘柄が注目された事も肯ける。


 然し乍ら、ウクライナでのロシア軍による原発への攻撃もあり、日本では原発が受け入れ難く、一時的に注目はされたものの、今や原発関連銘柄は低迷を余儀なくされている。


 低迷と言えば、北方領土関連銘柄も然り。

 

 6年前に「北方領土共同統治」で注目された川上塗料も、そうした銘柄の一つであり、

同社はこのところ株価が上昇し続けている三井物産(8031)系で、ロシアの天然ガス独占企業のガスプロムに天然ガスパイプライン用塗料を納入した実績がある。

 この川上塗料も、年初来では3600円の高値を付けたのに、昨日は日経平均が高騰するなか1559円の34円安と低迷している。


 それなのに三井物産は3336円の4円高、三菱商事が4608円の6円高と、先日も述べたがサハリン2に関わるこの北方領土銘柄は、2銘柄とも高騰を続けている。


 これは野村證券のアナリストも言っているように、円安による商社銘柄に妙味があるのであって、決して北方領土銘柄としての妙味で高騰したのではない。

 

 それに何より、2020年から ウォーレン・バフェット氏引き入れるバークシャー・ハサウェイが、子会社の、National Indemnity Companyを通して、日本の商社5社に投資した事が株価へのプラス要因を大きくしている。


 無論三井物産も三菱商事もその限りであり、かなりの含み益が出ているだろう。


 ただ、懸念されるのは、彼らが何時それら日本の商社株を売るかだ。

 それを私は、今、だと思っている。


 サハリン2のリスクが、我々の想像を越えた大きな影響を齎すからだ。


 畢竟、商社株は、この先調整を余儀なくされるだろう。


 では、その商社株を含めた北方領土銘柄にまったく妙味が無いのかと言うと、それはそうではない。


 何れプーチン政権は終わりを告げるだろうし、それがナワリヌイ氏を中心とした民主主義政権の樹立を伴うものであれば、充分にチャンスがある。


 否、チャンスしかない。


 何となればナワリヌイ氏がロシアの大統領になれば、反戦派の彼は国家元首として、当然ウクライナに対して戦後補償をするだろうし、それには莫大な費用を伴うからだ。

 たとえ北方領土と引き換えにしてでも、外貨が必要になって来る筈である。


 そうなれば、日本の北方領土返還運動に於いても、大いに光が射す。


 北方領土銘柄に於いても然り。


 但しそれらは数年先の話になろう。


 従って北方領土銘柄である商社株は基より、日本の株式市場も一旦は調整を余儀なくされる筈。


 私としては今後も基本的に弱気であり、1357の日経ダブルインバース(弱気のETF)が、350円から360円になれば迷わず買いたいと思っている。

 然し乍ら、昨夜23日の米株式市場でダウは反落し、前日比448ドル安の3万4358ドルで終えた事もあり、今日24日の東京市場も反落して始まった。


 米原油先物相場が大きく上昇し、高インフレが米景気を冷やすとの懸念から、消費関連株に売りが出たニューヨークの流れを受けての反落である。


 今日3月24日の1357の日経ダブルインバース(弱気のETF)も、昨日の386円の安値からは足踏み。

 下げ止まってしまった。

 350円~360円とは、少し欲張り過ぎたか?


 とは言え、3月30日に配当の権利落ちを控える銘柄の株価の一斉下落には、まだ4営業日の余裕がある。


 私としては3月29日迄の日経平均のより高いところでの、1357の日経ダブルインバースの買い、と、石油や樹脂と言った資源を扱う商社株で、配当利回りが10%もあると言う銘柄、8103明和産業の権利確定日である3月29日迄の空売りを考えている。


 何れにしても私は弱気であるが、今回は絶対に失敗したくない。

 何となれば、利益の一部をウクライナの支援金に充てるからである。


 それと、私としては北方領土返還に向けて北方領土銘柄を応援したいところではあるが、株価は調整局面に向かうと思っているし、何よりプーチンが戦争を遂行している今、北方領土銘柄に手を出すべきではない。


 その辺りは、北方領土返還運動に携わる日本の政治家が交渉相手を間違えないようにする事と同様、私としても、どの銘柄で、どう相場を乗り切るかが肝要で、それらを間違えないようにしなくてはならない。


 故に、私の相場は弱気で、ロシアの次期政権はナワリヌイ氏に、そして1日も早い停戦と、ウクライナに栄光を、である。

 



停戦とサハリン2の狭間で揺れる東京市場

 

 混沌とするウクライナ情勢など、何処吹く風の6営業日連続での株価上昇である。

 終値としては2月18日以来およそ1カ月ぶりに2万7000円台を回復した。

ただ、この株価上昇は、単に外国為替市場で120円台にまで円安が進行し、投資家心理が強気に傾いたからであり、決して市場のファンダメンタルズが改善した訳ではない。


 それに、ロシアとウクライナの停戦交渉は難航を極め、まったく先が見通せないと言うのに、円安からの東京市場の株高はどうにも不気味である。


 また、バイデン米大統領は21日、米欧を中心とした各国の結束によってロシアのウクライナ侵攻が思惑通りに進まず「窮地に陥っている」との見方を示したうえで、ロシアについて「追い詰められるほど、深刻な戦術を用いる可能性がある」と指摘した。

 加えてロシアが生物・化学兵器を用いる兆候にも言及している。


 我が耳を疑いたくなるが、しかしバイデン大統領の曰く、そんな事が起こってもおかしくない状況らしい。

 ただ、仮にそんな事になれば、NATO対ロシアと言う最悪のシナリオに発展する可能性が出てくる訳で、第三次世界大戦への懸念も生じて来る。


 加えて、20日付の英紙サンデー・テレグラフは、被害の実態を秘匿するため、ロシア軍がウクライナで戦死した自国兵の遺体を極秘裏にベラルーシに移送している可能性があると報じており、露軍の死者数を巡っては、露政府が2日、498人と発表した一方で、ウクライナ側は約1万5000人と主張していると言う。

 仮にウクライナ側の話を半分に見積ったとしても、実に7500人もの戦死者を出した事になる。 

 そのロシア兵の中には徴収兵もいるらしく、この先は未成年の徴収兵さえ戦地に送られる可能性もあるのだとか。


 そうしてロシアとウクライナが泥沼の闘争を繰り広げるなか、今日6営業日連続での続伸を遂げた東京市場では、8031の三井物産が3332円の198円高で終え、一時は年初来高値を更新。

 また、8058の三菱商事が4592円の296円高で終え、こちらも一時は年初来高値を更新。


 ここで注目すべきは、2社ともサハリンの天然ガス開発事業「サハリン2」に、大きく関わっている点である。


 既に英石油大手シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)が撤退を表明したロシア極東サハリンの天然ガス開発事業「サハリン2」には、三井物産と三菱商事が出資しており、日本の液化天然ガス(LNG)調達の7%程度を占めると言う。


 日本商工会議所の三村明夫会頭は、去る3月3日の記者会見で、「三井物産や三菱商事の単独の問題ではなく、背景には(石油や天然ガスを)使っている日本のガス会社や電力会社がいる」と述べ、撤退によるエネルギー供給への影響に懸念を示した上で、日本企業が撤退した場合について「LNGは中国に行くのではないか。ロシアを困らすことにはならず、日本のユーザーが大変なことになる」との見方も示していたのだそうだ。


 野村證券のアナリストは商社株の妙味について指摘していたが、今日の三井物産と三菱商事の株価上昇は、単に円安を背景とした一時的なもののように見受ける。


 日本商工会議所の三村会頭曰く、「サハリン2」の孕むリスクは単に三井物産と三菱商事に止まらず、日本のガス会社や電力会社も巻き込むものらしいが、ウクライナ情勢がこれ程拗れた今、三村会頭の指摘するガス会社や電力会社は言うに及ばず、日本政府をも揺るがす事態に発展するような気がする。


 この先、中国・北朝鮮・ロシア・ベラルーシ、或いはイランと言った独裁専制主義国家と、欧米やオーストラリア、日本と言った西側の自由主義諸国とは、益々分断の色を濃くして行くだろうし、三井物産や三菱商事が「サハリン2」から撤退しなければならないリスクは増すばかりである。


 故に私としては、商社株だけでなく、日本株全体に対して弱気なのだ。

 仮に、ここ数日のうちに日経平均が28000円を超えて上昇し、1357の日経ダブルインバース(弱気ETF)が350円から360円の安値を付けるとするならば、私は迷わずそこを買いたいと思っている。


 そしてこの相場に勝てたなら、利益の一部を迷わずウクライナに寄付しようとも。








 日本が「眠れる巨人」を起こすには?

 



 バイデン氏は25日のポーランド訪問に先立ちブリュッセルを訪れ、3月24日に開かれる北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)の首脳会議のほか、先進7カ国(G7)首脳会合に出席し、ウクライナへの支援や対ロ追加制裁などを議論すると言う。 


 加えてポーランドのドゥダ大統領とは26日に会談の予定で、ロシアの軍事侵攻で大量のウクライナ難民がポーランドに流入している事態を踏まえ、「人権や人道上の危機」への米国の対応について協議するのだそうだ。

 

 但し、この期に及んでもバイデン大統領の口からは、「支援」、「制裁」、或いは「人道支援」と言う言葉が発せられるのみで、今般のウクライナ侵攻に直接「介入」するだとか、或いはロシア軍を直接「叩く」との言葉は、一切発せられていない。


 プーチンが最も恐れるのはその言葉なのに、バイデン大統領がその言葉を口にする事は無かった。

 否、民意を考えれば、口にする事が無かったと言うより、口には出来ないのだろう。


 或いは国連の場での欧米諸国とロシアの論争に於いても、罵り合うだけでまったく解決の糸口さえ見られずに、最早国連と言う組織が機能不全を来している事を露呈している。

 

 加えて中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相が20日、米欧などによる対ロ制裁に反対する姿勢を改めて強調したように、中国がロシアを支援する事も明らかである。


 一方、ウクライナのオリハ・ステファニシナ副首相(36)が20日、西部リビウで朝日新聞記者らの取材に応じ、「自らを先例として、他のアジア諸国を牽引(けんいん)するリーダーとして振る舞ってほしい」と期待してくれたらしいが、日本が中国や北朝鮮に何かを言って聞いてくれるものではないし、況してや韓国とは外交交渉さえ出来ないほど拗れている現況である。

 

 明日22日には、国会でゼレンスキー大統領が演説するらしいが、どんな名演説が為され仮に自民党右派が奮起しようとしても、今の「石橋を叩いても渡らない」岸田政権からストップが掛かるだろうから、とても日本がアジア諸国を動かせるとも思えない。


 ところが刻一刻として、ウクライナでは非戦闘員たる一般市民の、しかも子供や女性、或いは妊婦の命迄もが失われているのだ。


 最早一刻の猶予も無いのである。

 ここでアメリカ国民が本気を出さなければ、この戦争はとても終わらないだろう。


 畢竟、我々日本人も、先ずは本気になる事が肝要となる。

 それに日本がアメリカに物申すにしても、我々が本気でアメリカに迫らなければ、彼らが聞いてくれる筈無いではないか。


 やはりここは、日本も本気でギリギリの決断をし、自ら率先して動き、本気でアメリカに迫る必要があるように思う。

 

 ヘルメットや医薬品などの緩い支援しかしない自分達が、世界に認められていると岸田政権が思っているのだとしたら、それは大きな間違いである。

 況してやそんな岸田政権の言う事を、アメリカが聞いてくれる筈は無かろう。


 これは私見であるが、私は海自のイージス艦一隻をエーゲ海に派遣してみてはどうかと思っている。


 何となれば高度なミサイル防衛システムである、SM-3ブロックIIAを搭載したイージス艦を保有しているのは、米海軍と日本の海自だけだからである。


 このSM-3ブロックIIAを使ったミサイル防衛システムには、莫大な費用と超高度なイージス鑑の操鑑技術などが必要になり、他国が二の脚を踏んだのも頷けるほど、希少で価値のあるものなのだ。


 ならば、今使わなくて何時使うのか?

 それこそ宝の持ち腐れである。

 そこで海自のイージス艦登用となる。


 例えば、SM-3ブロックIIAを搭載した「まや」などの海自のイージス艦一隻を、黒海には入らせずに、仲裁に入っているトルコの海域でもなく、そのギリギリ手前のNATO加盟国であるギリシャ海域で、黒海を見渡せるエーゲ海洋上に停泊させ、もしロシア軍が核ミサイルを使用した時にだけ、これを迎撃させる事にする。


 この案で注目して戴きたいのは、これが紛争地域への自衛隊の派遣には当たらず、また戦闘行為にも当たらない点だ。

 つまりはNATOのグローバルパートナーである日本の、NATO加盟国に対しての集団的自衛権の行使と言う事になるのである。


 簡単に言うと、「ウクライナに核ミサイルを打ち込んだら、NATO加盟国が放射能汚染してしまうから、それがウクライナに対して撃たれた核ミサイルでも迎撃する。しかし、そっちが打たなければ何もしないし、これは戦闘行為ではないよ」、と、言う理屈である。


 これこそがロシアに取っては相当に痛手を被る、日本の出来る最大の核抑止力になる。


 私はこれかギリギリ「セーフ」だと思っているが、或いはギリギリ「アウト」なのかも知れないし、それに私はこの通りにしろ、と、政府に言いたいのではない。


 要は、ウクライナがギリギリのところ迄頑張っているのだから、日本政府もギリギリのところ迄頑張って支援する事を態度で示す、と、言う事が必要だと言いたいのだ。

 私としては日本政府の防弾チョッキ提供が、とてもギリギリのところ迄頑張った結果とは言えないように思うのである。

 

 ウクライナに対して今のような緩い支援をするだけで、我々日本政府がギリギリの行動をしないのであれば、やはり「眠れる巨人」たるアメリカ国民も起きない筈。


 ただ、もし、日本がそうしたギリギリの決断をし、アメリカ政府に許可を得んと動き、「眠っていないで、あなた方も起きてくれ!」、と、迫れば、或いは「眠れる巨人」が起きる事があるかも知れないと思うのだが、如何か。