世界情勢と株価変動

日々の世界情勢と株価変動について考察

眠れる巨人の視線は、ウクライナではなく中国に釘付け?

 


 AFPBB Newsによると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は26日、東部ドンバス(Donbas)地方でロシアが「ジェノサイド(集団殺害)」を行っていると非難したと言う。


 ゼレンスキー氏は毎日恒例のテレビ演説で、ロシアがドンバス地方の各都市を焦土と化そうとしており、同地方が「無人」になる恐れもあると指摘。

 「国民の強制連行や民間人の大虐殺などを含むこれら総ては、明らかにロシアが追求するジェノサイド政策だ」と述べたのだそう。

 


 

 前述の報道でのゼレンスキー大統領の言う通り、確かにロシアはジェノサイド政策を進めている。 


 まるで世界を嘲笑うかのように。


 まるで力こそ正義だと言わんばかりに、ウクライナで虐殺の上に虐殺を繰り返す、プトラーことプーチン。




 また、時事通信によると、ウクライナ軍が、東部ドンバス地方のルガンスク州でロシア軍の猛攻にさらされていると言う。


 ガイダイ州知事によると、ウクライナの支配地域は「5%」に縮小。

 残る都市セベロドネツク周辺ではロシア軍が3方向から包囲を進め、退路を断たれたウクライナ部隊が完全に孤立する恐れが出ている

のだそうだ。


 住民の退避も完了していない中、ロシア軍は兵力を集中させてセベロドネツク一帯への無差別攻撃を継続。

 ウクライナのメディアは、激戦の末に陥落した南東部の要衝になぞらえて「第2のマリウポリ」になると警鐘を鳴らしていると言う。


 ルガンスク州をめぐっては今回、全域の陥落を避けたいゼレンスキー政権が、米欧に武器支援の加速を求めている。

 一方、ロシアのショイグ国防相は20日、完全制圧が「近づいている」と主張。

 双方とも態度を硬化させており、停戦交渉は見通せない状況だと言う。 




 そうして悲惨な状況が続くウクライナ。


 ただ、バイデン氏を始め米国民の視線は、中国に釘付けにされている。


  以下の報道がそれを裏付ける。




 ブルームバーグが、米国と台湾は経済関係の強化を図る交渉を発表する方針である事を伝えた。 

 事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたと言うことである。

 台湾を領土の一部と見なす中国への新たな挑戦とも取れる。


 経済協力強化やサプライチェーン強靱(きょうじん)化の取り組みが中心となり、一般的な自由貿易協定(FTA)には至らない見込みだ。

 正式発表前だとして関係者が匿名を条件に語ったと言う。




 無論、米国が台湾を始めインド太平洋地域を重視してくれる事は日本に取って有難いことだし、至極当然の事だと言える。


 ただ、そんな事をしている間にも、日々ロシアに拠って、東部ウクライナの無辜の民は虐殺され続けている。


 米国は今も武器供与と経済支援に終始し、ウクライナに犠牲を強いたままである。


 ロシアへの経済制裁も、短期的には無意味で、ウクライナでのジェノサイド(集団殺害)を止めるには到らない。


 決して米軍は投入しないし、視線はまったくウクライナに向いていないのだ。

 

 例えて言うなら、右手で武器を左手でドルを手渡し、首から上は中国に向いていると言ったところか。




 私は以前、山本五十六が真珠湾攻撃を省みて残した言葉に、「我々は眠れる巨人を起こしてしまったかもしれない。おまけに、その巨人はとてつもない敵意に満ちている」、と、言うのがあると書いた。

 

 また、アメリカ人が、甚(いた)くこの言葉を気に入っているらしいと言う事も。


 つまり近年世界警察の職を辞した米国は、殊にトランプ政権以降、今も尚、彼らの国是は「アメリカファースト」であり、世界で何が起こっても、自身が攻められない限りは戦う気がなく、眠ったままなのである。




 アメリカと言う国は、その事について言うと、第二次世界大戦前もそうであった。


 所謂、米国の孤立主義(こりつしゅぎ、英: Isolationism)である。


 この孤立主義とは、第二次世界大戦前まで米国が原則としたヨーロッパ問題に介入しない外交政策の事で、モンロー主義に代表される非干渉主義のことを指す。


 第二次世界大戦が始まっても孤立主義の支持は根強く、是非を問う論争が続く。


 1940年9月4日、ヨーロッパ問題非干渉を主張する「アメリカ第一主義委員会」が設立され、同委員会の主催する集会は常に熱狂的な支持者で溢れたが、皮肉にも日本の真珠湾攻撃によって、同委員会は活動を終息し、非干渉主義は一気に雲散霧消することになる。




 歴史は繰り返すと言うが、1940年9月4日、ヨーロッパ問題非干渉を主張する「アメリカ第一主義委員会」の設立と、中東問題に非干渉を主張した前トランプ大統領の、「アメリカファースト」は酷似していると、私は思うのだ。


 そのことが影響しているのかどうかはさておき、このところゼレンスキー大統領の、米国に対して怒りを露にする様子が、地上波放送などでは取り上げられている。


 今迄は米国の尻を叩く意味もあり、それが功を奏していたが、今後は「泣き落とし」作戦に転じてみてはどうか?


 今の戦況を打破するには、例えば陸上部隊とまでは言わずとも、対空戦略だけでも良いから、米軍の参戦が不可欠であるように思うのだ。


 それには眠ったままの、米国民の「眼を醒ます」事が絶対条件となる。


 今迄高潔で勇ましかったゼレンスキー大統領に、泣きながら訴えられれば、米国民の心は少なからず動くと思うのである。

 

 形振り構わず、米国民に対し、「世界の為に、どうか眼を醒まして欲しい!」、と、訴える姿は、想像するだに説得力がある。


 その辺りを、米国民の大好きな山本五十六の言葉である、「我々は眠れる巨人を起こしてしまったかもしれない」、を、交えながら、「岸田のび太」にはゼレンスキー大統領に訴えて貰いたい。


 たとえ「のび太」になってでも、今は何よりも先ず、「ジャイアン」の眼を醒ます事でウクライナの無辜の民の命を救う事が肝要。


 無論、ここで言う「ジャイアン」とは、米国民の事であり、バイデン大統領の事ではない。


 米国民の心を動かせば、「バイデン・ジャイアン」も動かざるを得ないように思う。


 ただ、高潔で勇ましかったゼレンスキー大統領が、日本の歴代の首相のように「のび太」になるのは見たくないが・・・・・。




 と、好き勝手な事を言っている私であるが、米国の視線が中国に釘付けになっている訳が、前述のように極東の安全保障問題だけでない事くらいは、分かっているつもりだ。



 その一つの理由として、FRBがこの5月の3~4日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、全会一致で、政策金利の水準(誘導目標)を、0.25~0.5%から0.75~1%に引き上げるように決めた事がある。


 FRBは3月、2020年3月から新型コロナ対応として続けてきた「ゼロ金利政策」を終え、政策金利を0.25%幅引き上げると決めた。


 今回はその2倍の0.5%幅の利上げで、00年5月以来22年ぶりの措置だと言う。


 利上げの加速を通じて、インフレ抑制に強い意思を示したのだが、このインフレは簡単に言うと、米国の株価を始め、ドルの価値を保ち、コロナで停滞した米国経済を支えんが為に、ドル紙幣を増刷出来るだけ増刷した事に端を発す


 つまり今回のFRBによる政策金利の水準引き上げは、コロナ禍を抜け出そうとしている今、ドル紙幣を増刷するのを止め、米国の金融政策をコロナ禍以前の正常な状態に戻す為に、どうしても必要不可欠なものなのだ。


 さて、そうして、米国の金融政策をコロナ禍以前の正常な状態に戻す為には、前述したFRBの施策以上に重要なのが、貿易赤字の縮小であり、貿易黒字の創出である。


 そうした米国の貿易収支に於いては、今般のウクライナ侵攻で、ロシア産に代わり、このところ米国産のLNGが盛んに欧州各国に輸出されており、或いは黒字も有り得るか、との計算も成り立つが、これには中国の存在があり、なかなか上手くはいかないのだ。




 そんな米国の貿易収支は、2022/02/08の日経電子版の報じたところによると、20年に新型コロナで輸出が急減速し、過去最大の貿易赤字を再び記録していたと言う。


  バイデン政権でも貿易を巡る米国と中国の緊張は続いており、そのなかでも21年の対中赤字は14.5%増の3553億ドルだったらしい。 


 今のレートに換算すれば、日本円で実に44兆8600億円と言う莫大な金額に上る。

 

 貿易赤字全体の3割強で、国別では最も多いらしいのだが、2022年度の日本の一般会計総額が107兆5964億円であるから、実に日本の国家予算の4割強もの貿易赤字が、中国に対して生じていると言うことになる。




 無論、米国としては、ロシアを支援する中国からの輸入を減らして行くのは当然で、中国に代わる貿易相手として、インドに白羽の矢を立てたいところなのだろうが、先日のクアッドでの様子を見ていても、どうもインドは米国の思うようにはならない。


 ただ、インドが無理でも、それ以外の何処かにその代わりを見い出す事は、米国に取っての喫緊の課題である。


 理論的にはプーチン政権が崩壊し、ナワリヌイ氏を始めとした民主勢力が新たな政府を樹立すれば、民主化したロシアは中国の代わりに成り得る。


 然し乍ら、プーチン政権が崩壊する事があっても、直近にロシアが民主化する事は不可能に近いし、仮に民主化しても、ウクライナに対しての戦後補償や、復興協力などもあるだろうから、民主化直後にロシア経済が機能することはない。


 それどころか、プーチン亡き後のロシアは混迷を極めるだろう。


 つまりロシアはどう転ぼうが、米国に取ってお荷物でしかないのである。


 それはまた中国に取っても同様で、彼らに取ってもロシアはお荷物でしかない。


 LNGなどの資源を安く買えるだろし、今のところウクライナ侵攻を静観している中国に実害は無いが、今後世界から総スカンを喰らうロシアを支えていくのは、並大抵のことではない。


 早晩、中国経済は苦境を迎えるだろう。


 オミクロン株が蔓延し、経済制裁を喰らう北朝鮮もまた然り。


 今後習近平氏は、ロシアと北朝鮮と言うお荷物を抱え、それでなくとも「ゼロコロナ」の失策で求心力を失い、低迷する中国経済を建て直さなければならないのだから、先行きは暗いとしか言いようがない。


 その他中国恒大のデフォルト問題や、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド問題、香港問題もある。


 中国の今後を占うのは余りにも困難だ。

 

 そんななか、東京も、ニューヨークも、何故か株価は上昇している。




 日経電子版は、27日の東京株式市場で日経平均株価は4日ぶりに反発し、前日比176円84銭(0.66%)高の2万6781円68銭で終えたと報じた。

 前日の米株式相場の上昇が投資家心理の支えとなり、半導体関連などに買い戻しが優勢だったと言う。

 海運株の上昇も目立った。

 半面、戻り待ちの売りも出やすく、相場の上値は重かった。

 日経平均は朝方に大きく上昇し、節目の2万7000円に接近したあとは次第に上げ幅を縮小した。

 前日の米市場では小売企業の好決算を受けて消費関連株に買いが入ったが、米景気の先行きなどに対しては慎重な見方も多い。   

 週末とあって様子見ムードも広がりやすく、午後は膠着した相場展開となった。

 



 また、前夜のニューヨークも続伸。




 NQNニューヨーク=戸部実華氏は、27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続伸し、前日比575ドル77セント(1.8%)高の3万3212ドル96セントで終えたと報じた。

 朝方発表の米物価指標の伸び率が縮小し、インフレ加速への過度な警戒感が和らいだ。 

 消費関連やハイテク株を中心に買いが入り、取引終了にかけて上げ幅を広げた。

 ダウ平均は週間で1951ドル高と、9週ぶりに上昇した。週間の上昇率は6.2%と2020年11月2~6日(6.9%)以来の大きさ。

 4月の米個人消費支出(PCE)物価指数で、変動が激しい食品とエネルギーを除くコア指数は前年同月比4.9%上昇と前月(5.2%上昇)から伸びが鈍化し、市場予想と一致した。

 PCE物価指数は米連邦準備理事会(FRB)が物価指標として重視している。

 「秋以降に想定したほど金融引き締めを加速せずに済むとの見方が市場の一部で広がり、投資家心理の改善につながった」(SIAウェルス・マネジメントのコリン・チェシンスキ氏)との声が聞かれた。




 と、中国経済の先行きへの懸念など、何処吹く風の株式市場である。




 先日来私は、セルインメイ「5月に売れ」の格言を、今一度に胸に刻んでいるところであり、日経平均が28000円を取り戻し、日経ダブルインバース(弱気ETF)が350~360円の安値を付けたら、一先ず資金の7割程度をダブルインバースに置き換えるつもりだと書いており、今もその思いは変わらない。


 それにここに来て、思惑通り株価が反発。


 先日も日経ダブルインバース(弱気ETF)をもう少し早く買うべきだったか、と、心が揺らいだものだが、信念を曲げずに良かった。


 私は当初の予定通り、5月最終週迄に前述したトレードを完遂させたい。

 或いは6月の第一週迄は粘るかもだが。



 私としてはウクライナの勝利を目前にした今、御祝儀相場宜しく、ニューヨークや東京の株価が、この5月末から6月の初旬に掛けて、再び28000円を取り戻す事を信じたい


 そしてその後は中国経済の失速の可能性と、1ドル127円代と言う安値を付ける日本円の弱さ、或いは日本のG7最弱の経済的脆弱さに鑑み、株価の急落を予測したい。


 

 日経平均が28000円を取り戻したら、証券会社は個人投資家に、株価が30000円を取り戻す寸前の今こそがチャンス。

 と、株を買え、買え、と、個人投資家を煽る筈だが、その時こそ機関投資家は、個人投資家が高値掴みをしたところを見計らい、個人の高値掴みを吸収し、空売りを仕掛けて売り方に回るだろう。


 証券会社と機関投資家は、個人が損をした分で肥え太ると言う点では、一蓮托生なのである


 私は今後、株価が上昇すればするほど、機関投資家の空売り残高を注視していくつもりだ。


 モルガンや野村など、大手が売り方に回り出したら、私は日経ダブルインバース(弱気ETF)を買う。

 今のところ350~360円の安値が狙い目。


 さて、そうした相場が到来するのか?


 相場の一寸先は、神のみぞ知るところ。 




 ただ、前述の通り、今や株価は中国の景気次第ではあるのだが、米国には、もう少しウクライナにも眼を向けて貰いたい。

 

 世界が今最も救うべきは、経済でも、株価でもなく、ウクライナ国民の命なのだから。




 何よりも、ウクライナに恒久の平和を。




 そして、ウクライナに栄光あれ!