追い詰められたロシアと、忍び寄る人民元安の脅威
テレビ朝日・CABLE NEWS NETWORKの報じたところでは、ロシア軍との激しい攻防が続くウクライナ東部の都市セベロドネツクで、ウクライナ軍が反撃し市の5割を奪還したと現地の知事が明らかにしたのだそうだ。
ウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事は5日、ウクライナ軍最後の拠点とされるセベロドネツクについて、「ウクライナ軍がロシア軍を押し戻し市の5割を奪い返した」とSNSに投稿。
知事によると、ロシア軍は10日までにセベロドネツクを攻略するよう命令を受けているということだそうだ。
一方、ロシアメディアによると、ロシアのプーチン大統領はインタビューで、ウクライナに射程の長いミサイルが提供された場合、「まだ攻撃していない目標に対し攻撃を開始する」という考えを明らかにしたと言う。
アメリカが射程およそ70キロの高機動ロケット砲システム「ハイマース」を提供することを念頭においたものとみられる。
また、毎日新聞は、ウクライナ政府が6日、ゼレンスキー大統領がロシア軍との戦闘が続く東部ルガンスク州とドネツク州を訪れ、前線のウクライナ軍部隊を視察したと明らかにしたことを報じた。
2州の訪問に先立ち、南東部ザポロジエ州も訪れた。
5月下旬の北東部ハリコフ州訪問に続く前線視察で、兵士らを鼓舞する狙いがあるとみられている。
ゼレンスキー氏によると、露軍からのミサイル攻撃などの被害を受けているルガンスク州のリシチャンスク、ドネツク州のソレダルを訪問。
ウクライナ軍の前線兵士と面会し、前線の作戦状況などについて報告を受けた。
ゼレンスキー氏は「私が出会った人、握手をした人たちなどすべてを誇りに思う。私たち全員の勝利を祈っている」と述べた。
ザポロジエ州の知事はゼレンスキー氏に対して州内の約6割が露軍に占領されており、一部では戦闘も続いていると報告。
2701カ所のインフラ施設が破壊されたが、現在迄に700近い施設が再建されたという。
【松岡大地】
前述の二つの記事からも分かるように、ウクライナ軍が善戦に止まらず、東部でもロシア軍を押し返し、ゼレンスキー大統領がキーウを出て、ロシア軍との戦闘が続く東部ルガンスク州とドネツク州を訪問したのである。
最早ロシア軍の敗走は時間の問題。
また、プーチン政権の命運も風前の灯だ。
然し乍ら、そうなると困るのが、他ならぬプーチンの盟友、習近平国家主席である。
そうしたことからか、最早終わってしまったプーチンやロシアではなく、今後プーチン率いるロシアを下支えしなければならない中国の習近平国家主席に、世界中の経済アナリストの視線は注がれている。
今後は中国の属国となるだろうロシアの、世界経済に及ぼす影響力なんぞ、最早ウクライナ侵攻前には遠く及ばない。
微々たるものだ。
無論、原油高を始め現在の物価高は、ロシアのウクライナ侵攻によるところが大いに影響しているが、世界経済から排除されてしまった彼の国ロシア経済の動向など、今後経済アナリストの分析する対象からは外れていくことだろう。
それよりも、今後ロシアの宗主国となる中国経済の動向である。
先ずは以下の、NRI(野村総研)エコノミストの記事をお読み戴きたい。
2022/05/24、野村総合研究所・エグゼクティブ・エコノミストの木内 登英氏の記事である。
○ 2015年の人民元ショックを想起か
中国から海外への資金流出と人民元安が急速に進んでいる。
国際金融協会(IIF)が発表したデータによると、中国の第1・四半期の資本流出額は過去最高に達した。
4月以降も資本流出と人民元安の流れは続いている。
5月20日に中国人民銀行(中央銀行)が、貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の5年物を引き下げたことを受け、人民元安はさらに加速している。
こうした動きは、2015年の人民元ショックを思い起こさせるものだ。
人民元ショックとは、2015年8月11日に中国人民銀行が人民元を突如切り下げたものだ。
その後、国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引出権)に人民元が採用されるために必要な技術的な措置、との説明をなされたが、直後には、中国が景気刺激効果を狙って人民元を切り下げる、
近隣窮乏化政策と広く受け止められた。それによって他国の国際競争力が低下するなどの懸念から、世界的に株安などの金融市場の混乱を招いた。
また、さらなる人民元切り下げ観測などから、中国からの大量の資金流出が生じた。
中国政府は通貨を支えるため、年末までに外貨準備を約7,000億ドル取り崩す事態となった。
また各種の資本規制の導入も余儀なくされ、人民元の国際化という政策目標が遠のいてしまったのである。
○中国の金融政策は景気減速と人民元安
の板挟みに
現状ではそこまで大事には至っていないが、中国からの資金流出は激しい。
中国の複数の清算・決済サービス企業のデータによれば、同国の債券市場では4月に3か月連続となる大幅な資本流出が見られた。
ここ3か月間で外国人投資家の保有額は3,014億元(約450億3000万ドル、約5兆7500億円)減少したという。
また株式についても、中国本土と香港の株式市場を結ぶ株式相互取引接続(ストック・コネクト)取引を通じ、3月1日から5月20日までの間に49億ドル相当の中国株を外国人投資家が売却したという。
人民元は対ドルで年初から足元まで4.7%下落している。
下落傾向が一気に強まったのは、中国人民銀行が4月25日に、預金準備率を0.25%ポイント引き下げたことだ。
さらに、中国人民銀行は5月20日、貸出金利の指標となるLPRの5年物を15ベーシスポイント引き下げて4.45%とした。
事前予想よりも大幅な引き下げとなった。
他方、同時に引き下げが予想されていた1年物LPRは予想外に3.70%に据え置かれた。
銀行は5年物LPRに基づいて住宅ローンの金利を決める。
住宅ローン以外の融資は、1年物LPRで決まる傾向が強いようだ。
今回、5年物LPRだけを引き下げたことは、スランプに陥っている住宅市場を支える狙いであったと考えられる。
いわばターゲット金融緩和である。
他方で、事前に予想されていた1年物LPRの引き下げを見送ったのは、さらなる人民元安と資金流出のリスクを抑えるためだったと考えられる。
中国政府、人民銀行は、国内景気の減速と人民元安と資金流出の板挟みの状況にあり、難しい政策運営を強いられているのである。
こうした状況下では、通貨安や金融市場の混乱はより深まりやすいのが一般的である。
○アジア地域が新興国市場の不安定化の
中心地となる可能性も
米連邦準備制度理事会(FRB)が急速な金融引き締め策を続ける中、金融緩和を維持する日本では通貨安、つまり円安が進んでいる。
他方で、中国は金融緩和を進めており、米中間の金融政策は全く逆方向に動いている。
こうした下では、円以上に人民元はドルに対して下落してもおかしくない状況であり、この先、人民元安の余地はなお大きいようにも思われる。
感染拡大とゼロコロナ政策の影響により、足元で中国経済は急速に悪化している(コラム「深まる中国の景気減速とアジア金融市場のリスク」、2022年5月13日)。
これも、米中の金融政策の差を拡大し、人民元安と資金流出のリスクをさらに高めるのではないか。
そして、中国の景気減速の影響は、主に日本を含めたアジア周辺地域に波及することが予想される。
それは、ドルに対するアジア通貨全体の下落リスクや資金流出リスクを高めることにもなるだろう。
コロナ問題、ウクライナ問題、米国の急速な金融引き締めは、世界の新興国の金融市場に打撃を与えやすい。
この数週間はそうした傾向がより顕著になってきている。
そうしたなか、中国経済の減速の影響を大きく受けるアジア地域が、新興国市場の不安定化の中心地となる可能性が出てきたのではないか。
(参考資料)
"China's Markets Are Tested by Foreign Outflows and a Falling Currency", Wall Street Journal, May 23, 2022
「中国人民銀、5年物最優遇貸出金利大幅下げ 融資促進狙う」、2022年5月20日、ロイター通信ニュース
と、同エコノミストは中国経済の減速と元安による、アジア地域の経済の混乱への懸念を指摘している。
無論、私も同意見である。
ウクライナの勝利とロシアの終焉は、我々の希望であり、世界の希望だ。
ただ、その事による代償にも備えなければならないところ。
それ即ち、中国経済の減速と元安が齎す、株価の暴落である。
然し乍ら、ここに来て前週のニューヨークの下落にもかかわらず、私の思惑通りに日経平均は続伸した。
日経電子版では、6日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末比154円32銭(0.56%)高の2万7915円89銭で終えたと伝えた。
3月30日以来、およそ2カ月ぶりの高値。
米株価指数先物が日本時間6日の取引で堅調に推移し、日本株の買い安心感に繋がった。
外国為替市場で円安・ドル高が進み、自動車や機械など輸出関連銘柄の一部の支えとなった。
日経平均の上げ幅は200円を超える場面があった。
前週末には観光需要喚起策「Go To トラベル」の再開が政府内で浮上していると伝わった。
空運や鉄道、百貨店など関連する内需株の上昇が目立った。
政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を7日に閣議決定することを目指している。
岸田文雄政権としては初の骨太の方針で、成長戦略も盛り込まれる見通し。
政策的な経済の下支えへの期待も引き続き日本株を支える材料になっている。
レモンド米商務長官が5日に対中制裁関税を引き下げる候補として日用品や自転車が候補になるとの見方を示したと伝わった。
米国の高インフレに対応するためとみられ、関税引き下げが米中の経済にはプラスになるとの見方も、株式市場にはポジティブに受け止められたようだ。
朝方は売りが先行した。
前週末の米株式市場では米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続けるとの見方から、主要3指数がそろって下落。
この流れを受けて、日経平均は下げて始まり、下げ幅が一時200円を超えた。
と、今日の続伸には、中国の苦境が盛り込まれていない事に注目したい。
そして、6月1日に私は、セルインメイ「5月に売れ」の格言が、「6月に売れ」の格言に変わってしまったことを詫びた上で、日経平均が28000円を取り戻し、日経ダブルインバース(弱気ETF)が350~360円の安値を付けたら、一先ず資金の7割程度をダブルインバースに置き換えるつもりだと書いていた。
また、6月の第二週の17日迄は粘るかも、と、書き替えさせて戴いてもいた。
その考えは今も変わらない。
その理由として、
先ず第一に、1357・日経ダブルインバース(弱気ETF)の、チャート上で株価下落の兆候と言われる、直近の「雲の下抜け」である「デッドクロス」が、5月30日に発生している事があり、この先暫くは、ダブルインバースの株価は下落し、日経平均は上昇する兆候が見られるのだとした。
また他にも、25日移動平均線が412円で、1月5日の年初来安値が369円である以上、デッドクロスが発生したからには、412円を上回る可能性は低く、今後年初来安値の369円に近付くか、或いはそれを下回る可能性もあると言う事になるとも。
加えて、そのダブルインバースの信用売り残(空売り)は増加している。
次いで第二に、そのダブルインバースと相対する強気ETFである、1570・日経ネクストファンドの信用買い残が増加していること。
また、ネクストファンドのデッドクロスが発生したのは、2月24日に遡る事になり、直近は発生していないこと。
つまりネクストファンドの詳細に於いても、日経平均が暫くは上昇基調にある事を示唆しているのである、とさせて戴いた。
そして、今日のダブルインバースの株価は374円であり、360円代まであと僅かに5円。
360円代に突入したら、私は利益の出ている現物保有の個別銘柄を総て一旦売却し、今週から資金の7割に到る迄、少しずつダブルインバースを買い増すつもり。
今日になって漸く、ウクライナの勝利を目前に、御祝儀相場宜しく、ニューヨークや東京の株価が、再び28000円を取り戻す寸前までに迫った。
また、その後は中国経済の失速の可能性に鑑み、株価の急落を予測するものであり、何より犯罪国家やジェノサイド国家の好景気を許したくないのである。
これも繰り返しになるが、日経平均が28000円を取り戻し、株を買え、買え、と、大手証券が個人投資家を煽り始める頃、私は動き出したい。
機関投資家が個人投資家の高値掴みを見届けたら、その高値に空売りを仕掛けて来るだろう筈で、そこを見逃さずに動くのである。
証券会社と機関投資家は、個人が損をした分で肥え太ると言う点では、一蓮托生なのであるとは、先日も書いた通り。
今後、株価が上昇すればするほど、機関投資家の空売り残高を注視していくつもりだ。
加えて、モルガンや野村など大手が売り方に回り出したら、私は日経ダブルインバース(弱気ETF)の資産のうちの割合を増やす予定。
360円代に入ったら、日々ナンピンを入れて買い増す。
さて、そうした相場が到来するのか?
相場の一寸先は、神のみぞ知るところ。
追伸・
「5月に売れ」が「6月に売れ」になったお詫びに伝えた、個別銘柄情報の3189・anapだが、今日の引け値ベースで425円と、お陰様で前週水曜日に373円で買ったところから、52円幅(13.9%)上昇したので、欲張らずにこれも今週売却する予定。
先日も伝えたが、私には敬愛するデイトレーダーが二人居て、その二人は全く違う銘柄を推奨するのだが、そこそこ利益を上げていて、二人とも優秀なデイトレーダーである。
たまに二人共同じ銘柄を追い掛けて利益を上げることもあるが、極々希に二人共に同じ銘柄を買って負ける事があるのだ。
しかし、そうした銘柄は1~2カ月後に高騰する場合が、往々にしてある。
つまり優秀ではあるが、二人共に高騰すると予測した時期が早過ぎたのである。
それが3189・anapと、前回もお伝えした。
女性衣料販売の会社であるが、先月その二人のトレーダーが好決算を予測し、決算跨ぎをした結果、見事に株価は下落。
二人共に悔しい思いをしていたのだ。
ところが同銘柄の株価はこのところ上昇基調にあり、これまた私の敬愛するトレーダーの言葉で、「株と言うのは誰しも安いところを買おうとするが、買うのは株価が上がり始めてからで良い」、と、言うのがあり、今株価は漸く上がり始めたところだ。
また、機関投資家の売りが一巡し、信用売り残が急激に減少しているので、売り圧力に乏しく、今のところ僅かな出来高ではあるが、上昇し易くなっている。
で、私はその日引け間際373円で買った。
それから、あともう一銘柄あるので、「5月に売れ」が「6月に売れ」になったお詫びに、重ねてお伝えする。
4165・プレイドである。
企業マーケティングをしている会社で、CX(顧客体験)プラットフォームの「KARTE」を開発、運営しているIT企業だ。
4月7日は1453円だった株価が、今日の引け値ベースで545円の11円高と、高値引けはしているものの、業績下方修正の発表から、株価は凡そ4割弱と低迷している。
この銘柄も、先月二人の優秀なデイトレーダーとも、株価下落後の反発を予測するも、不発。
それと言うのも、モルガンが売り方に回り、数日前迄信用売り残がずっと増加を続けていたのだから、何をか言わんやである。
然し乍ら、今日になって信用売り残が減少するものの、信用買い残は減っていない。
それに、毎朝GD(ギャップダウン・始値が前日終値より下がること)から、安値引けしていたのが、今日は高値引けしたのだ。
どうやら個人の投げ売りを拾っていたモルガンが、買い方に回ったようなのである。
但し、焦らずに、明日、明後日、と、始値と引け値をチェックし、高値引けが少なくとも2~3日続いたことを確認してから、買って戴きたい。
25日移動平均線が715円なので、少々株価が上がって、500円代後半になってから買っても遅くはない。
700円手前まで戻すイメージで、スウィング取引(数日から数週間)で。
ただ、仮に株価が上がらなくても、株式投資は自己責任でお願いする。
苦情は受け付けませんので、あしからず。
それと、もう一つ。
私の敬愛する米国の著名投資家カール・アイカーンの言葉。
「AIを研究して金持ちになる人がいる。私は人間生来の愚かさを研究して金を稼ぐ」
私はこの言葉を胸に、日々精進している。
何よりも、ウクライナに恒久の平和を。
そして、ウクライナに栄光あれ!
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