世界情勢と株価変動

日々の世界情勢と株価変動について考察

停戦とサハリン2の狭間で揺れる東京市場

 

 混沌とするウクライナ情勢など、何処吹く風の6営業日連続での株価上昇である。

 終値としては2月18日以来およそ1カ月ぶりに2万7000円台を回復した。

ただ、この株価上昇は、単に外国為替市場で120円台にまで円安が進行し、投資家心理が強気に傾いたからであり、決して市場のファンダメンタルズが改善した訳ではない。


 それに、ロシアとウクライナの停戦交渉は難航を極め、まったく先が見通せないと言うのに、円安からの東京市場の株高はどうにも不気味である。


 また、バイデン米大統領は21日、米欧を中心とした各国の結束によってロシアのウクライナ侵攻が思惑通りに進まず「窮地に陥っている」との見方を示したうえで、ロシアについて「追い詰められるほど、深刻な戦術を用いる可能性がある」と指摘した。

 加えてロシアが生物・化学兵器を用いる兆候にも言及している。


 我が耳を疑いたくなるが、しかしバイデン大統領の曰く、そんな事が起こってもおかしくない状況らしい。

 ただ、仮にそんな事になれば、NATO対ロシアと言う最悪のシナリオに発展する可能性が出てくる訳で、第三次世界大戦への懸念も生じて来る。


 加えて、20日付の英紙サンデー・テレグラフは、被害の実態を秘匿するため、ロシア軍がウクライナで戦死した自国兵の遺体を極秘裏にベラルーシに移送している可能性があると報じており、露軍の死者数を巡っては、露政府が2日、498人と発表した一方で、ウクライナ側は約1万5000人と主張していると言う。

 仮にウクライナ側の話を半分に見積ったとしても、実に7500人もの戦死者を出した事になる。 

 そのロシア兵の中には徴収兵もいるらしく、この先は未成年の徴収兵さえ戦地に送られる可能性もあるのだとか。


 そうしてロシアとウクライナが泥沼の闘争を繰り広げるなか、今日6営業日連続での続伸を遂げた東京市場では、8031の三井物産が3332円の198円高で終え、一時は年初来高値を更新。

 また、8058の三菱商事が4592円の296円高で終え、こちらも一時は年初来高値を更新。


 ここで注目すべきは、2社ともサハリンの天然ガス開発事業「サハリン2」に、大きく関わっている点である。


 既に英石油大手シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)が撤退を表明したロシア極東サハリンの天然ガス開発事業「サハリン2」には、三井物産と三菱商事が出資しており、日本の液化天然ガス(LNG)調達の7%程度を占めると言う。


 日本商工会議所の三村明夫会頭は、去る3月3日の記者会見で、「三井物産や三菱商事の単独の問題ではなく、背景には(石油や天然ガスを)使っている日本のガス会社や電力会社がいる」と述べ、撤退によるエネルギー供給への影響に懸念を示した上で、日本企業が撤退した場合について「LNGは中国に行くのではないか。ロシアを困らすことにはならず、日本のユーザーが大変なことになる」との見方も示していたのだそうだ。


 野村證券のアナリストは商社株の妙味について指摘していたが、今日の三井物産と三菱商事の株価上昇は、単に円安を背景とした一時的なもののように見受ける。


 日本商工会議所の三村会頭曰く、「サハリン2」の孕むリスクは単に三井物産と三菱商事に止まらず、日本のガス会社や電力会社も巻き込むものらしいが、ウクライナ情勢がこれ程拗れた今、三村会頭の指摘するガス会社や電力会社は言うに及ばず、日本政府をも揺るがす事態に発展するような気がする。


 この先、中国・北朝鮮・ロシア・ベラルーシ、或いはイランと言った独裁専制主義国家と、欧米やオーストラリア、日本と言った西側の自由主義諸国とは、益々分断の色を濃くして行くだろうし、三井物産や三菱商事が「サハリン2」から撤退しなければならないリスクは増すばかりである。


 故に私としては、商社株だけでなく、日本株全体に対して弱気なのだ。

 仮に、ここ数日のうちに日経平均が28000円を超えて上昇し、1357の日経ダブルインバース(弱気ETF)が350円から360円の安値を付けるとするならば、私は迷わずそこを買いたいと思っている。


 そしてこの相場に勝てたなら、利益の一部を迷わずウクライナに寄付しようとも。