世界情勢と株価変動

日々の世界情勢と株価変動について考察

 プーチンの焦りの裏に逃げ腰な中国の態度。それらが及ぼす市場への影響。


 ロシア軍が一時制圧していたウクライナの首都キーウ近郊の凄惨(せいさん)な状況が明らかになってきた。


 首都キーウ近郊のイルピンでは1日、ロシア軍の撤退後、初めて赤十字国際委員会が現地に入り、街中に人影はなく、住宅や商業施設など大半の建物がロシア軍の攻撃で破壊されていると言う。


 赤十字国際委員会によると、現地には住民3500人が残っているとみられ、負傷者の応急処置を行ったほか、支援物資を届けたということで、ロイター通信によれば、同じくキーウ近郊のブチャでは、路上に民間人とみられる数多くの遺体が放置されていて、市長は「住民300人以上がロシア軍に殺害された」と話している。


 ウクライナ政府がキーウ州全域の奪還を発表するなど、北部でウクライナ軍の反転攻勢が続く一方、ロシア軍の侵攻による現地の凄惨な状況が明らかになって来た。


 そんななか、米情報当局はウクライナでのロシアの戦略について、5月初めまでに東部ドンバス地方などを制圧し、勝利宣言を目指す方針に転じたとの見方を示している。


 米当局者らによると、ロシア地上軍はこの1カ月で期待したような戦果を挙げていないことから、プーチン大統領は勝利を印象付ける必要に迫られ、東部に重点を移す可能性が高い。

 米当局がつかんだ情報では、対独戦勝記念日の5月9日が目標とみられる。


 一方、欧州のある国防当局者は「戦況や和平交渉の状況にかかわらず、プーチン氏は5月9日に戦勝パレードを実施するだろう」としたうえで、「パレードにはどの部隊や車両が参加するというのだろう」と疑問を投げ掛けた。


 米欧の当局者らは、ロシアが表向きの期限を設定したとしても、実際には長期化を覚悟しているとの見方を示す。

 欧州のある外交当局者によれば、プーチン氏は「チェチェン紛争型の長期戦」に備えるほかに選択肢がないとみられる。


 5月という期限の背景には、春になると凍結した地盤が緩み、重装備の車両が通過しにくくなるという事情もあるとされる。


 ウクライナ国家安全保障・国防会議(NSDC)のダニーロフ書記も3月31日、プーチン氏が5月9日の戦勝パレードを目指している可能性を指摘した。


 米当局者らはまた、プーチン氏がウクライナ侵攻を統括する軍指揮官を初めて指名する構えだと分析している。

 同国南部の制圧を成功させた司令官が選ばれる見通しだということだ。



 ここに来て、何やら旗色が変わって来た。


 それと言うのも、プーチンが今般のウクライナ侵攻の失敗に於いて、火消しに追われているからである。

 最早首都キーウの陥落がままならないばかりか、「チェチェン紛争型の長期戦」に備えなければならず、南部や東部を何とか陥落させ、5月9日の戦勝パレードを目指したいのだと言う。


 それには今、中国に対する西側諸国の批判的な視線が注がれている事も背景にある。



 例えば2日付の英紙タイムズに、ロシアによるウクライナ侵攻の直前に、中国がウクライナに大規模なサイバー攻撃を仕掛けていたと報じた事である。


 情報機関の複数のメモを入手したとしている。

 事実ならば、中国がロシアの侵攻を事前に把握していた可能性が改めて浮上しそうで、そうなると、中国はロシアのウクライナ侵攻に加担した事になり、ベラルーシ共々中国も制裁の対象に成りかねない。


 それでなくとも、中国から投資マネーが逃避し始めていると言うのに、その上制裁ともなると、中国に取っては泣きっ面に蜂だ。


 ちなみに、2022年1~3月の外国人投資家による株・債券の売越額は、4月1日時点の集計で384億元(約7400億円)にも及ぶと言う。

 四半期ベースで過去最大の規模になる。

 こうした動きの根底には、ウクライナに侵攻したロシアの通貨や証券が暴落した連想から、強権的政治・外交姿勢の中国への投資を見直す動きが広がりつつあるからだと言う。



 そうした事もあって、このところのウクライナ侵攻での中国の発言にしても、ロシア擁護のトーンが薄くなり、中国がロシアと距離を置いている事が分かる。


 言い替えれば、中国は逃げ腰なのだ。


 ロシア国内の経済での混乱を見れば、明日は我が身と身構えるのも無理はない。

 習近平氏も気が気ではないだろう。


 総じて今後はウクライナ情勢の動向と、チャイナリスクの相関々係はより強まる筈。



 そんななか、前週金曜、1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに反発し、前日比139ドル92セント(0.4%)高の3万4818ドル27セントで終えた。

 朝方発表の3月の米雇用統計が労働市場の回復を示し、消費関連株の一角に買いが優勢となった。

 新たな四半期に入り新規資金が流入しやすいとの見方から、取引終了にかけ買いが強まる展開だった。

 

 雇用統計では景気動向を映す非農業部門の雇用者数は前月比43万1000人増と市場予想(49万人増程度)を下回ったが、過去2カ月分は大きく上方修正された。

 労働参加率が上昇するなか、失業率は2月の3.8%から3.6%に低下し、市場予想(3.7%)も下回った。

 平均時給は前年同月比で市場予想以上に増えた。

 労働市場の引き締まりを示したと受け止められた。



 そうして好調な米経済と対象的に、中国はゼロコロナ対策での景気後退と、中国恒大に見る不動産価格高騰問題、或いは少子高齢化問題など課題が山積している上に、ロシアのウクライナ侵攻による、西側諸国からの懐疑的な視線も注がれており、チャイナリスクのバロメーターは上がりっ放しである。


 またそんな中国に依存度の高い日本も、そうした事は他人事ではなく、今後の東京市場の動向に大いに関わる。


 無論プーチン政権の崩壊と、その事によるウクライナの平穏は世界中の悲願であり、今は日本政府も日本国民もその事に全力を傾注すべき時ではあるが、その事とチャイナリスクは表裏一体。


 株式投資をする者は、その事を充分考慮の上で事を為すべきであると思うが、如何か。


 何はさておきウクライナに平穏の日々を。

 

 ウクライナに栄光あれ!